夢を見た。酷く懐かしい夢だった。
キミは私の隣に立ち、曇りのない澄んだ瞳で、私を師と仰いだ。

その声が、その顔が。
目覚めた今も、強く鮮明に残っている。

夢の中で私は、キミの淹れた紅茶を飲んだ。
それは渋みが強く、とても飲めたものではなかったが、慌てて謝る、キミの姿はとても愉快で。咎めるよりも先に、笑ってしまった。
夢はそこで、ぷつりと途切れた。

キミは物覚えが良かった。
たった一度の教えで、キミはすぐに、私好みの紅茶を淹れられるようになった。
共に飲んだあの味は。キミの笑顔は。
この身体に、染みついている。この瞳に、今も焼きついている。

あの懐かしい日々は、あの幸福な時はもう、二度とこの手に戻る事はない。
だが夢の中でなら、私はこうしてあの日々を、あの日々の続きを、いつまでも見る事が出来る。
目覚めた直後にのし掛かる苦しみも、やがてまた幸福へと変わってゆく。
それならば私は、繰り返しキミの夢を見よう。見続けよう。

この灯火が消える、その時まで。
何度も。

何度も、私は――


キミの夢を、

ついったに載せていたSSS。加筆修正済。

 

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